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寒鱈を食べ尽くす。


 タラは全身食べ残すところがない。オス・メス共にビタミンDを豊富に含み、たんぱく質が多く脂肪が少ない。サッパリとした食味が鱈の身上である。旬はむろん冬の最も寒く厳しい時期であり、昆布との相性もいいから、あったかい鍋料理が一番初めに思い出される魚だろう。フライ、ムニエル、粕漬、醤油や味噌漬けにしても美味しい。またオスの精巣はシラコといい(キクワタ、タツなどとも呼ばれる)椀ものの具として使われたり、刺身やさっと湯通しにしてポン酢醤油で食べたりで、これも旨い。なじみのタラコ(塩タラコ)はスケソウダラの卵巣であるがマダラのタラコは庄内地方では"コズケ"(コンニャクなどにまぶして醤油で味付ける)や醤油漬にして保存のきく状態にし、しばらくは楽しめる。タラは白身魚の中でも用途が広い。干し鱈は昔から高タンパク質食品の代表選手であったし、北欧でも古来から生活を支えてきた交易商品として重要な魚であった。スケトウダラはスリ身にされてカマボコなどの練り製品やファーストフードの原料になっている。

 さて、そもそも「ドンガラ汁」とは何か。ガラとは"アラ"がなまったものという。そしてドンガラとは、庄内で捕る寒鱈の身(肉)を除いた、頭、内臓、骨、ヒレなどの総称といえる。こうして揃った具の一式をブツ切りにして鍋に放り込み、味噌仕立てで仕上げれば、潮の香がつまった名物ドンガラ汁ができる。寒風、ときに雪が吹きつける磯場で摘みとった岩のりを添えると、風味に一層独特な趣が加わって厳寒の日本海料理になるのである。内臓のうち特に肝臓は「脂ワタ」といい、鍋一番のコクをつくり出すドンガラ汁の立役者と言ってもいいだろう。鱈は調理すると、煮つけても鍋にしてもアクが出る。このアクをこまめに掬い取ってから味付けをするというのがタラ料理のコツだ。

 ――オレンジ色の小さなソーセージを思わせて、子供の頃、口にふくまされた肝油は、文字通りこのタラの肝臓が原料とか。また、タラは二日酔い効くといわれたり、利尿作用もあるという。タラコやシラコは不老長寿の薬にもなるというから誠にありがたい魚である。


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