『あやめ』    1984年07月(第239号) 

 人は中々怠け者で、ついつい“立場”で
 考え“慣れ”という自信を持ったりする。
 日々生き延びる事はできるが“生きる”
 事から離れ、やがて……世間という神様
 を信奉し、常識という経典を心に刻み、
 愛の夢を見る。いずれ、あやめか……。


 『紫乃ちゃん』 1984年08月(第240号)  

 “30才までは結婚しない”等と言ってた
 ら、30才の誕生日と共に二人の子持ち。
 現在上の彩人君4才。紫乃ちゃん1才6
 ヶ月。"トウシャン、トウシャン"と寄っ
 て来られると、ついついくつろいでしま
 う。女房は……古くなる一方だが、子供
 達は日々新しい……のデス。


『竜胆(リンドウ)』 1984年09月(第241号) 

 夜、丘に竜胆が、月明りのシルエット、
 ふたつ。蒼く寄せ合う花と花と花。開か
 ず、揺れて、空を向く。叢、深く虫の音。
 秋風が背を越えて、谷の底へ沈んで行く。


 『港 橋』  1984年10・11月(第242号) 

 80号の油絵を描いていて、あとひと月
 で完成!と思っていたら、イーゼルから
 外れて倒れたのでした。はずみで、真ン
 中に穴があいて……私は、3日程泣いて
 暮したのでした。人生なんですね、これ
 が。


 『山居倉庫』   1984年12月(第243号) 

 この頃、自分の世界が狭くなった。大分
 駆けたつもりで、ふと気がつくとまるで
 前に進んでいない。つい楽をして、即物
 的なものに寄りかかる。これじゃあいか
 ん!と酒を飲み…やがて、“花も嵐も夢
 の中”


 『 猫 』  1985年02・3月(第244号) 

 賢くはないが、不思議な風格を持ち、怠
 け者であるが敏捷で、根拠のない自信を
 持っていたりする。……まるで、私の2
 才の娘!そのうち大きくなって“偽りは
 あったけど、嘘はなかったの……”等と
 言い放つのかも知れない。しかし、男は
 騙しても、幸せになって欲しいと思った
 りする。

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